BIS論壇No.177

「アジアインフラ投資銀行(AIIB)の現状」

              2016年4月15日 中川 十郎

本年1月に57か国が参加して発足した「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)はこのほど世界銀行と初の協調融資の枠組みで合意し、4月13日ワシントンの世銀本部で世銀キム総裁とAIIB金立群・総裁が署名した。AIIBは今年、約12億ドル(約1300億円)の融資を予定しており、そのうちの大部分が世銀との協調融資になる見込みだとのことである。(朝日新聞 4月14日)AIIBは中央アジア、南、東アジアの交通、水、エネルギー事業などへの融資を検討中で、近く1号案件を発表するという。金総裁は「世銀との緊密な連携で、世銀から学ぶことは多い」と語り、世銀の担当者は「世銀は幹部クラスから現場の担当者までAIIBと深くかかわってきた」と発言。今後、世銀とAIIBとの関係強化が見込まれる。

中国はアジア、中東、アフリカ、欧州を結ぶ経済圏構想の「一帯一路」構想も推進中で、今後AIIBは道路、鉄道など物流面や、発電所、各種プラントなどへの資金供給、融資などで活躍するものと思われる。

3月14日に初の東京事務所を設置した欧州復興開発銀行(EBRD)は欧州や中東で経済支援を手掛けているが、EBRDのスマ・チャクラバテイ総裁は中国が主導するAIIBと年内に少なくとも中央アジアで2つの融資案件を進めることを明らかにしている。(日経3月10日)

EBRDはこれまで、旧ソ連圏や中東欧を中心に支援してきたが、今後は中東・北アフリカ

ギリシア、中央アジアなどでのインフラに融資する方向である。そのため、本年1月にEBRDに加盟した中国との関係強化を目指しているものと思われる。これにより中国側も欧州と「一帯一路」政策も含め、欧州との結びつきを強め、協調融資が増えると思われる。

チャクラバテイ総裁は「新シルクロード構想はEBRDが力を入れるカザフスタンなど中央アジア諸国とも密接に絡んでおり、中國企業と共同で投資を進める。EBRDやアジア開発銀行(ADB)世界銀行だけでは、アジアや中東などの膨大なインフラ需要にこたえられない」と話し、AIIBと積極的に協業する姿勢を示した」(日経3月10日)という。

アジア新興国では鉄道や電力供給網などの建設に多額の資金が必要で、ADBによると2010~2020年に約8兆ドル(約900兆円)のインフラ需要があるが、ADBや世界銀行など既存の国際機関の融資額はその数パーセントにとどまっている。かかる状況下、今後AIIBの世銀や、EBRDとの協調融資はさらに増えるものと思われる。しかしADBの最大の株主で総裁も毎回日本からだしている日本はAIIBの融資基準が不透明だとしてAIIBに批判的で、米国に同調してAIIBには参加していない。逆にAIIBに対抗し、財務省やJICAは中南米とアジアのインフラを取り込むと米州開発銀行(IDB)連携することに4月10日合意し、日本政府が出資してIDB内に500万ドル(約5億円)の基金を設け、ADBとアジアのインフラで連携し、IDBとの連携でAIIBに対抗し世界全域のインフラ投資を主導する体制を整えるという。日本政府は今後アジアのインフラ投資に数年間で1100億ドルを投じるという。日本としてはAIIBに対抗するのでなく、AIIBと協力することこそ第一義とすべきではないか。