BIS論壇No.181

『米コロンビア大学シンポジウムに参加して』

中川 十郎

さる5月12日、13日コロンビア大学関係のセミナーが東京であり参加した。

5月12日はコロンビア大学ビジネススクール創設100周年記念パーテイが帝国ホテルで、

13日は私も2002~2003年客員研究員として留学したコロンビア大学ビジネススクール・日本経済経営研究所創立30周年記念「日米の経済関係」コンファレンスがホテルニューオータニで開催された。

12日のパーテイではブシュ・シニア-政権で2001年から03年まで大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務め、現在コロンビア大学ビジネススクール院長を兼ねるコロンビア大学教授グレン・ハバード氏があいさつした。経済・金融の本場ニューヨークで1916年以来100年にわたる伝統を誇るコロンビア・ビジネススクールの歴史と主要卒業生の世界的な活躍ぶりが報告された。日本からのビジネススクール初の留学生はキッコーマン醤油の茂木会長、女性初の留学生は鶴田知佳子・現東京外国語大学大学院教授で、両氏も参加されていた。鶴田教授はNHKの衛星放送の同時通訳で名声を博しておられる。筆者がニチメンン・ニューデリ支店駐在時、鶴田教授のお父上が東京銀行ニューデリ支店長をされており、社宅が近かったこともあり、以来、親しくしており、不思議な御縁を感じている。

ハバード院長によるとビジネススクールへの中国、インド、韓国の留学生は増加傾向にあるが、日本の留学生は一時に比べ半減しているとのこと。日本政府や文部科学省、大学はグローバル教育を喧伝しているが、日本留学生の実態は、まことにゆゆしき事態である。  筆者がかって客員教授として在籍した北京対外経済貿易大学への留学生も韓国や米国の留学生に比し、日本人留学生の落ち込みが顕著で、日本のグローバル教育の将来について悲観的にならざるを得ない。日本は国際教育について抜本的な対策を講じなければ、他国に伍していけなくなるのではとの危機感を抱いた。13日のコンファレンスには安倍首相も出席され、挨拶されたが、国際教育について日本の抜本的な戦略が必要と思われる。

コンフェレンスでは「激動する東アジアの中の日米関係」、「日米経済の国際的展望」、「イノベーションの秘訣~企業文化とガバナンス」、「安倍のミクス 第2ステージ -成果と今後の挑戦」など白熱ある有意義な討議が行われた。特にアベノミクスに関する討議では討論者の新浪剛史・サントリー社長と伊藤隆敏・コロンビア大学国際公共政策大学院教授の発表は圧巻で、日本の大学、企業が内向きでグローバルな視野に欠け、国内で同質の価値観で思考、行動をしており、抜本的な意識、組織改革を行わなければ日本は学術、ビジネスとも世界で孤立、劣化していくだろうとの指摘は参加者に強烈なインパクトと危機意識を喚起した。

日米の学術研究をめざし、日本経済研究所を創設し、以来30年間、日米の経済経営研究に邁進しておられるHugh Patrick所長・コロンビア大学名誉教授の熱意が今回の素晴らしい30周年コンフェレンスを成功に導いた。80歳後半の同教授の気魄とたゆまぬ日米経済経営研究の努力と学究に強い感銘を受けた今回の30周年記念日米経済シンポジウムであった。