BIS論壇No.182

『伊勢志摩G7サミット』

2016年5月28日 中川十郎

2016年5月26~27日、伊勢志摩で行われたG7サミットの議長声明を安倍首相が記者会見で発出した。一連の発表を聞いていて、ブエノスアイレスで東京オリンピックの誘致に関して安倍首相が強調した『福島原発は Under Control』という強引な発言を思い出した。

日本の東京五輪・パラリンピック誘致委員会がシンガポールの実態のない「ブラック・タイデイング」と契約を結び、2億3000万円を支払った疑惑についてもフランス検察などが取り調べを進めている。これに対し日本政府や検察は本格的な調査を開始していない現状だ。ここでもパナマ文書でも名前が挙がっている「電通」が暗躍しているようだ。この機会に電通の実態を徹底的に調査することが肝要と思われる。

上記議長声明で安倍首相は「世界経済に関して不透明さが残っており、世界的に市場が動揺している。最大のりスクは新興国経済に陰りが見え始めていることだ。世界経済の成長率は昨年、リーマンショック以来最低を記録した。最も懸念されることは世界経済の収縮だ」と、リーマンショックという言葉を何回も繰り返し危機を力説。「G7はその認識と強い危機感を共有した。金融、財政、構造政策を進め、3本の矢を放つことを合意した。アベノミクスを世界に展開する。」と独りよがりの発言に終始した。G7の中でGDP成長率が最低で本年度はマイナス成長も予想されている中、アベノミクスの失敗が自明であるにも関わらず、日本経済の実情をわきまえず、このように大言壮語することは実態を見失うことになるのではないか。日本経済の現状と、足元をまず謙虚に見つめることこそ肝心だ。

安倍首相が「世界経済はリーマンショック前の状況に似ている」と強調することには経済専門家からは違和感が表明されている。SMBC日興証券の丸山義正氏は「リーマンショック級の危機が迫っているといわれるのは違和感を覚える。リーマンとは状況が違う」と批判。大和証券の熊谷亮丸氏は「現在の新興国景気の低迷とリーマンショックによる世界的な景気悪化は構造が異なる」と指摘がある。(朝日新聞5月28日)筆者も全く同感である。

これは安倍首相が過去「東日本クラスの大震災とリーマンショックのような事態が生じない限り、消費税は2017年4月に引き上げる」と何度も約束してきた事実を反故にして、来春の消費税増税を見送るための口実にしているとの見方が強い。G7の首脳会談を引き合いに出し、議長声明で「世界経済の現状はリーマン前の危機的状況だ」と牽強付会し、消費税増税を延期するのは姑息な手段ではないか。「パナマ文書」で言及されている代表的なタックスヘイブンのケイマン島(筆者はかって商社時代ニューヨーク駐在中、現BISワシントン代表の今村氏とヨットハーバー買収商談で訪問したことがある)には1万8857の企業があり、日本の企業の投資は2015年の時点で63兆円という国税収入を超える金額が流れている。(国際決済銀行の発表=『パナマ文書の正体』大村大次郎著(ビジネス社)92ページ)。安倍政権はケイマンの日本企業から正しく税を徴収することで消費税増税を取りやめることさえ可能になるという。ただちにケイマンの日本企業の脱税、節税調査を開始すべきだ。

世界的にみても南太平洋などの島嶼部のタックスヘブンだけで1800兆円の資金が集めれれているという。これは世界総生産の実に3分の一に匹敵する。早急な調査が求められる。