BIS論壇No.193

 「TICAD 6」,「G20」,「ASEAN 首脳会議」と「TPP」

             2016年8月28日

中川 十郎

秋の風情が感じられる今日この頃、国際政治経済分野では国際的な動きが活発化している。本年前半は6月の英国のEU離脱問題が大きな話題を呼んだ。また2011年の東日本大震災に続き、2016年3月以降の熊本地震頻発も西日本に地殻変動を引き起こしつつある。

激変の年といわれる申年の2016年後半は8月27~28日アフリカ・ケニアの首都ナイロビで開催される日本政府主導のTICAD6,(第六回アフリカ開発会議)にアフリカ54カ国の首脳に国連、世銀も参加。安倍首相には77の企業・大学が同行。約70件の覚書に調印するという。9月4~5日にはウラジオストックで「東方経済フォーラム」が開催され安倍・プーチン大統領の会談も予定されている。今後の日ロ関係強化策が話し合われる見込みだ。

さらに9月中にラオスで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議も開かれる。2015年末に域内6億人、GDP2.5兆ドルのアセアン経済共同体(AEC)が発足。東南アジア10カ国の経済共同体が活動を開始。アジア経済開発の核として発展が予想されている。

5月のG7伊勢志摩サミットに続き、9月の国際会議で特に重要なのは9月初めに中国・杭州で開催されるG20サミット会議だ。この会議には東南アジア諸国連合(ASEAN)に加え、アフリカ連合(AU)の議長国など25カ国が参加。G7, 経済協力開発機構(OECD)も含め、保護主義の回避、金融規制改革、各国での格差問題への対応策。東シナ海問題。昨今話題となっている「パナマ文書」が暴露した租税回避問題など広範な討議が行なわれることを期待したい。2016年1月に発効したIMF増資による出資比率は米国の17.5%、日本の6.46%に次ぎ中国が6.39%で第3位となった。ドイツ、英国、フランス、イタリアに次いでインドが2・75%で8位、ロシア2.71%で9位、ブラジルが2.32%で10位となり、BRICSなど新興国が今後の世界金融分野でも発言力を高めるとみられる。

TPPについては日本政府が9月の臨時国会で数の力で国会承認を得ようと動いている。だが米国大統領候補の民主党ヒラリー・クリントン、共和党候補のドナルド・トランプともにTPPには反対で、再交渉も視野に入れている。民主党サンダース議員もTPP反対を表明。8月25日には米上院共和党院内総務・マコネル上院議員が「現在のTPP合意には深刻な問題点があり、今年これに関して行動することはない。次期政権で変更が加わる可能性がある」と発言。日本政府としては米国の動向から、TPP国会承認は拙速を戒め、他の協定参加国の動静も見極めて、慎重に行動することが求められる。この意味で最近出版され、話題を呼んでいる山田 優・石井勇人著『亡国の密約』(新潮社)、鈴木宣弘著『悪夢の食卓』(Kadokawa)、山田正彦著『アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった』(CYZO)の味読を勧めたい。これに対し日経経済教室はジョルゲンソン・ハーバード大教授、伊藤元重・学習院大教授、石川城太・一橋大教授のTPP賛成論学者の言説(8月23~25日)を喧伝。新任の世耕・経産相はTPP早期承認に全力を挙げると発言している。(日経8月5日)。上記TPP反対3著作と合わせ読んで、どちらが正しいか考究願いたいものだ。