BIS論壇No.206

『中央アジア・ユーラシア情勢』

1月28日 中川十郎

「一帯一路」、「AIIB」などで近年脚光を浴びている中央アジア・ユーラシアの研究発表会が貿易研究センター主催で「世界の地政学的変動と中央アジア」と題し、去る1月23日霞が関ビルで開催された。非常に有益だった。

基調講演者は袴田茂樹・新潟県立大学教授・青山学院大学名誉教授、パネルでは田中哲二氏・中央アジア・コーカサス研究所所長の司会で 清水 学・ユーラシアコンサルタント社長、茅原郁生・拓殖大学名誉教授、元陸将補、出川展恒・NHK解説委員が発表された。

パネルでは中央アジア・ユーラシアの最新動向の発表が中心だった。政治的な動き、特に中国、ロシア、北朝鮮の軍事的脅威論が主に論じられた。トランプ大統領の出現で、米中関係は緊張。米露関係は北朝鮮を含めて緊張緩和するのではとの見方も表明された。

質問時間に田中哲二氏より筆者に質問を要請された。会議の内容は政治、軍事的分野からの解説と中露脅威論が論じられた。したがい政治の下部機構たる経済面を中心に中央アジア、ユーラシアは2015年にインド、パキスタンが上海協力機構に加盟、将来人口30億人の巨大市場が中央アジア・ユーラシアに誕生する可能性があるがどう見るか。TPPからの米国の離脱で日本としてはアジア諸国中心の東アジア包括的経済連携(RCEP)と日中韓3国の早急なるFTA締結、ASEAN+3協力に加え、近年著しい発展を遂げつつある上海協力機構(SCO)と日本、ASEANとの協力策を検討すべきではないかと清水 学氏に質問した。

彼は上海協力機構設立の動機は加盟各国の国境での紛争、テロ防止が主眼だとの意見で、経済分野でASEANやアジア各国、日本の関与の余地は少ないのではないかとのことであった。これに対し筆者は意見が違う。SCO結成時は上海ファイブメンバーは確かに国境での紛争、テロ防止が主眼であったが、20年後の今日は、ユーラシアにおける巨大経済圏構築を目指している、BRICS有力メンバーのインドがSCOに加盟したことはSCOの発展に寄与し、近い将来、ユーラシアに人口30億人の巨大市場が出現する。日本としても、その動向には十分注意すべきことを力説した。

2015年末には資本金1000億ドル、参加国57か国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が北京に発足。さらにBRICS開発銀行も上海に資本金500億ドルで発足。中国単独でユーラシアでの諸プロジェクトに融資する「シルクロード基金」が400億ドルの資本金で活動を開始。さらにSCO銀行も設立される。これらの潤沢な資金で、中國が主導する「一帯一路」

計画への投資、アジア、中央アジア、ユーラシア、中近東、アフリカ、欧州を結ぶ巨大グローバル物流計画が動き出す。すでに中国からドイツ、フランス、英国へは貨物鉄道直行便が開通。中國、ヨーロッパの巨大物流が動きだしている。

一帯一路周辺に広がる市場規模は60か国。世界人口の60%、世界GDPの60%。この地域のエネルギー資源は世界の75%に達する。日本としても米国に気兼ねすることなく、日本の国家利益の観点からもAIIBに早急に加入し、21世紀に世界で最も発展するとみられるユーラシアの「一帯一路」戦略に参画するべきだと強く訴えた。