BIS論壇No.203

「日中韓水墨画学術展覧会・検討会・除幕式」

中川十郎

去る1月7日、上野の日展会館本館で首記会合があり参加した。日中韓の芸術家20名が参加し、最近の日中韓の政治的な緊張緩和のために、3カ国の文化、芸術面からの働きかけが必要との意見が多く出された。

日中韓の芸術、文化交流を通じ、親善友好を長年にわたり努力しておられ、今回のイベントを推進されたアジア太平洋水墨画会会長の溝口墨道氏ご夫妻のご尽力を高く評価したい。BISとしても今後とも出来る範囲で協力して行きたいと思う。

溝口氏とは10年前の2007年3月、私が日中100人委員会副会長として内蒙古植林ミッション43人の団長として北京、内蒙古を1週間訪問した時に、同ミッションに参加しておられた御縁で以来10年間交流が続いている。

私は北京でミッションに落ち合う前に、1週間、四川省膨州市貿易顧問とし、日本ミッション団長として四川省の特に農産物の輸出促進ついて講演した。あわせ農業地帯の視察を行った。訪中以前に、腰痛があったが、四川省、内蒙古の二週間の強行軍で腰痛がさらに悪化。毎晩、中国の鍼灸院に通いながら、痛みを止めていた。しかし腰痛は治らず、溝口氏が私のカバンや荷物を代わりに毎回持っていただいたご親切を今でも感謝している。

内蒙古訪問に際しては胡徳平常務委員が同行され1週間つききりで案内いただいた。北京最後の夜は天安門の人民公会堂で豪華な晩餐会を開催いただき感激したことを思い出す。

溝口さんよりは1月7日のテープカットの依頼が有り、あわせ、その際、挨拶してほしいとのことであった。私は挨拶で、日中韓は過去2000年近くの交流があり、秦の徐福伝説以来、遣隋・遣唐使時代、日本の僧侶が中国に留学。また芸術面においても雪舟などの留学もあり、中國とは長年の交流がある。韓国とも仏教の伝来、文化交流などの歴史がある。

近来、不幸にも日中韓では政治的な緊張があるが、政治の下部機構である経済、文化交流を強化することにより、民間ベースで日中韓の親善友好交流を促進すべきこと。私が尊敬する日本の代表的文化人・岡倉天心は日本文化の源流はインド、ペルシアをはじめとする中国、朝鮮にあり、特に日中韓の協力が大切なこと。すでに100年前に、天心は「アジアは一つ、Asia is One」を唱え、アジア諸国の協力の重要性を強調していたこと。これは今日のアジア共同体構想の淵源でもある。この日中韓美術展の開催が3国のさらなる友好促進に貢献することを期待すると強調した。

テープカットには日中国交回復の偉業を成し遂げられた田中元首相の御子息の田中京氏、精華大学美術学院・張夫也教授、日中協会・白西紳一郎理事長、東京芸術大学・三田村有純教授、中国大使館文化担当官など10名が参加。BIS関連では村石恵照武蔵野大学教授・BIS理事、島根の小松昭夫・人間自然科学研究所理事長、小松電機産業社長、オフィス由の細木由里子コーデイネーターなどにご参加いただいた。ここに記して感謝申し上げたい。

BIS論壇No.203

「ユーラシアグループのトップリスク2017」

中川十郎

未来予測で有名なイワン・ブレマー率いるユーラシアグループの恒例の2017年世界トップリスク予想が米国時間1月3日に発表となった。その概略を御参考までに取り急ぎ下記ご紹介したい。

2017年のトップリスクは地政学の後退だとしている。ユーラシアグループは6年前にグローバルリーダー不在のG‐ゼロの世界を予測した。地政学環境の下降的変動は明らかだ。

米国はリーダーとしての責任を取ることに関心を失いつつある。特にヨーロッパの同盟国は米国との関係を弱めている。

ロシアと中国は限定的ながら、米国になり替わろうとしている。特にロシアは広げつつある裏庭で安全保障面で動き出している。一方、中国は経済面で地域的にも、グローバル的にも米国にとって変わろうと努力している。

このような趨勢は、最初は中東で、それからヨーロッパで、そして現在は米国で ”グローバリズム“に対するポピュリストの反乱として加速しつつある。2016年を通じて多くの分野でG-ゼロの状態が強まっている。

Brexit問題や、イタリアで国民投票が行われないことで、環大西洋同盟はさらに退化している。またTPP(環太平洋連携協定)が崩壊し、さらにフィリッピン大統領が米国との断絶を発表する一方、ロシアはほとんど6年にもなる内戦でアサド大統領を支援し、シリアで勝利を手にしており、米国のアジア転換戦略は終末期を迎えている。

米国大統領選挙でドナルド・トランプが選ばれた衝撃はG-ゼロの世界が今や現実になったことを示している。世界の唯一のスーパーパワーとして外交推進策の“アメリカ・ファースト”の勝利は米国のリーダーシップの必須の信念と米国の例外性の10年間に終焉と欠陥を齎している。それによりグローバル経済を守るべき価値を推進し、安全保障、貿易での米国の指導権と強く結びついていたグローバリゼーションとアメリカ二ゼーションのパックス・アメリカの地政学時代は70年間で終わる。

かくして2017年は地政学後退の時期に突入する。本年は戦後で最も不安定な政治リスクの年となる。少なくともそれは2008年の景気後退の時と同様、グローバルマーケットにとって重要な年となるということだ。

しかしそれは軍事面の衝突や主要な中央政府機構の解体の引き金を引く地政学不振には必ずしも発展することはないと思う。しかし、国際安全保障や経済構造の弱体化や世界のもっとも力ある政府間の不信を深めるリスクも今や考えられる。そのような後退はつぎのような10の分野で始まる。

1.米国の独自政策

“トランプのアメリカ・ファースト“哲学と アメリカの価値、独立を構築する”メイクアメリカ・グレイトアゲイン“の誓約。

2.中国の反発

本年秋の指導者の交代は来たるべき10年もしくはそれ以上の政治・経済の変遷を形造る。

 

3.弱体化するメルケル

本年はヨーロッパでの政治リスクの波が起こりうだろう。そのうちのいくつかはドイツのメルケル首相の指導力の弱体化で起こるだろう。

 

4.非改革

今年、先進国及び発展途上国の政治家が他の分野で指導力を発揮せず、成長の展望と投資家の新たな機会が齎されないだろう。

 

5.技術と中東

効果的な独裁にもかかわらず中東の政府は数十年弱体化する。

 

6.中央銀行が政治がらみになる

 

過去10年間で初めて中央銀行は新興市場のみでなく、米国、ユーロ圏、英国などでも批判に直面することになるだろう。

 

7.ホワイトハウスとシリコンバレーの対立

カリフォルニアの技術指導者や選挙でトランプに反対して投票した主要な州は新大統領にたてつくだろう。

 

8.トルコ

選挙民は大統領の権力の拡大に対し、賛成、反対は半々だろう。エルドアン大統領は主導権を取るために攻撃的な動きを高めるだろう。

 

9.北朝鮮

2017年は北朝鮮にとって重要な年になるだろう。しかしそれは良いことではない。

 

10.南ア

アフリカ国民会議に対する内外の反対でズーマ大統領をとりまく政治的なリスクは2017年にさらに悪化するだろう。それは南アの経済にリスクを齎し、地域の安定に害となる。

少なくとも2017年の米国国内の展望をすると、積極さはあまりなく、中庸となる。パキスタンの首相シャリフとインドの首相モデイは国内問題に注力するだろう。ブラジル大統領は困難を齎すだろうが、立法府は重要な改革を早急に行うべきだ。    (訳責:中川)

BIS論壇No.201

「2016年の回顧と展望」

2016年12月31日 中川十郎

変化の多かった申年の2016年もあと数時間で終わる。2016年は内外激変の年だった。

6月には英国は国民投票でEUからの離脱を決定。2017年3月から離脱交渉が始まる。

英国の主権も含めた独自の通商、政治改革が始まると思われる。2017年にはヨ-ロッパでフランス、ドイツ、オランダなど主要国の大統領や議会選挙もあり波乱含みだ。

米国ではドナルド・トランプの大統領選当選で、米国の外交、経済政策など大きな変更が予想される。日本の安倍政権がアベノミクスとからめて長年、実現に注力してきたTPPだがトランプ氏は大統領就任式の2017年1月20日にTPP脱退を宣言すると予告している。

それにも拘わらず安倍政権は日本の国会でTPPを強引に批准し、米トランプ新政権にTPPから離脱しないように説得するという。日本の要請でトランプ氏がTPP離脱を思いとどまるとはとても思えない。トランプ政権は今後、二国間交渉で米国に有利なFTAを目指すとみられる。この点で、TPPを含め、先の日露首脳会談を取り仕切ってきたといわれる谷内NSA(国家安全保障局)局長の情勢判断、外交戦略は情報論的にも問題があると思われる。このことは12月中旬の日露首脳会談で北方領土交渉がほとんど進展せず、失敗に終わったことでも明白だ。関係者に猛省を促したい。おそらくロシアは強力な情報機関を駆使し、日本の交渉方針を事前に入手して首脳会談に臨んだのではないか。ソ連の情報収集法は批判されている。米大統領選に際し、ロシアの情報機関がサイバー攻撃で米民主党の選挙情報を不法に入手したとして、オバマ政権がロシアへの報復制裁を行ったことを見ればロシアのやり方がわかる。TPPに関しては安倍政権は面子にこだわり、死に体のTPPに固執している。だが、日本はこの際、通商戦略の転換をはかり、いまこそ隣国同士の日中韓のFTA、ASEAN10カ国を含め、日中韓、さらにインド、ニュージーランド、豪州の16カ国を包含したRCEP(東アジア包括的地域連携)やFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)交渉や中国主導のAIIBへの加入、一帯一路への協力など、いまこそ真剣、かつ積極的に取り組むべきだ。

2017年2月12日に創設26年目を迎えるBIS(日本ビジネスインテリジェンス協会)はさる12月12日に150回研究会を終了した。この間の参加者は累計12000人、講師累計450人に達する。会員は200人。研究会参加者は毎回60人を突破している。2017年はやる気満々の勉強熱心な若手、特に女性の参加を歓迎したい。会員各位の御紹介を切望したい。

2017年は2月20日に「アジアにおける平和希求」、4月24日、「ビジネスインテリジェンスと競争情報」、6月19日、「中国の21世紀の通商戦略~AIIBと一帯一路」(工学院大学孔子学院と共催予定)、9月25日、「健康医療―東洋医療と西洋医療の融合」、12月11日、「異文化交流とグローバル教育」など深く掘り下げた情報研究会の開催を準備中です。

9年目を迎える明治大学との共同企画講座はこれまでの「ビジネスインテリジェンスとマーケテイング戦略」に加え、2017年度は「異文化コミュニケーションとグローバル教育」講座も開講すべく検討中です。興味ある会員各位におかれては友人、知人もお誘いの上BIS同様、本年も引き続き御協力、御指導を賜りたく、年初にあたり茲許お願いする次第です。