BIS論壇No.207

「17回東アジア包括的経済連携(RCEP)神戸会議」中川十郎

 

 

トランプ政権のTPPからの離脱後、初のRCEP交渉官会議が2月27日~3月3日神戸で開催さ

れた。ASEAN10カ国とFTAを結んでいる日中韓、豪州、ニュージーランド、インドの16カ

国の交渉官700名が参加した大掛かりな国際貿易会議だった。 2012年11月にASEANが提

唱。2013年5月に第1回交渉会議が始まって以来、4年弱で「経済技術協力」、「中小企業

支援」などについては合意がなされたが、今後はハードルの高い「関税」や[投資ルール

]など難しい交渉が控えている。RCEPが実現すると人口約34億人(世界全体の約半分

)、GDP約20兆ドル(世界の約3割)、貿易総額10兆ドル(世界全体の約3割)の広域経

済圏が出現する。それはまた将来のアジア・太平洋21カ国、地域の「アジア太平洋自由貿

易圏(FTAAP)」形成の基盤ともなるとして注目されている。日本とRCEP交渉国との貿

易構造は2013年で日本の輸出総額約31.7兆円。輸出38.6兆円に達している。

今回の神戸会議では注目すべき合意には至らなかった模様だが、RCEP交渉会合後の3月

14~15日チリ―での閣僚会合に中国が招待されている。とくに日本、豪州、ニュージーラン

ドはASEAN諸国に対し、TPPスタイルのルールに合意するよう圧力をかけているという。

さらにTPPのテキストをRCEPに持ち込もうとしている。TPP撤退以降、多くの国がこれ

までかけてきた政治的コストを再活用しようと必死であると2月24日、東京でNGOのステ

ークホールダ―会合に参加したニュージーランドのジェーン・ケルシー・オークランド大

学教授は警告した。同教授はさらにRCEPの交渉はTPP同様秘密交渉であり、その交渉の

推移には十分注視すべきこと。特にハードルの高い」「関税」、「投資ルール

」、「ISDS」(企業の国家に対する投資紛争条項)などについてはその交渉推移を監視す

ることが肝心だと訴えた。RCEPにはASEAN後発発展途上国のミャンマー、ラオス、カン

ボジアなども参加しているところより、TPP型の超高度な自由化目標を掲げることは困難

であろう。TPP交渉参加国の日本やオセアニア諸国はRCEPの事情を踏まえ、アジアに適

した条件交渉を行うべきだろう。RCEP交渉においては日本、シンガポールなどの「質の

高さを重視するグループ」、フィリッピンや中国、インドなど「早期合意最優先グループ

」、さらにラオス、カンボデイアの「後発途上国グループ」の3グループがあり、これら3

グループの調整が大切だ。しかしアジアの発展段階の違う特殊な事情を勘案し、穏健な条

件での交渉に努力することが肝心である。3月5日付け日経新聞社説は「TPPの国内手続き

を終えた日本こそRCEPを主導すべきで、TPPが実現しようとしていた質の高い貿易・投

資ルールに少しでも近づけるべきだ。日本は貿易・投資の自由化の意義を粘り強く中印に

説いてほしい。

日本がRCEPを前進させれば米国が圧力を感じ、長い目で見て米国がTPPへの復帰を検討

するきっかけにできるかもしれない」と全く自国本位の説を主張している。しかし日本は

まず、発展段階も違い、宗教、言語も違うアジアでのFTA交渉においては自国中心の考え

方ではなく、アジア諸国の立場に立ち、アジアの発展を見据えた未来志向のRCEP戦略を

構築すべきであろう。