BIS論壇No.223

「疲弊を続ける日本の地方」2017年5月9日 中川十郎
4月中旬、1週間、私用で郷里の鹿児島に帰郷した。滞在中好きな温泉に朝晩14回浸った。出張中は携帯以外、PCは持参せず、久し振りに静養ができた1週間だった。
パーキンソン病の弟につきそい、病院に同行した。地方では1,2を争う大きな病院だ。
驚いたのは病院に来ているほとんどが高齢で、手押し車や、介護椅子で、杖を突いている老人だったことだ。待合室は老人でいっぱいで足の踏み場もない感じで地方の老齢化が急速に進んでいる現実に直面し、一瞬息をのんだ。
それ以上に驚いたのは病院への行き帰りに見たシャッターが下り、閑散とし、さびれた商店街であった。世界最高速で少子高齢化が進んでいる日本の地方への対応が大幅に遅れている実態に唖然とした。
安倍政権の2017年度の防衛費は戦後最大。アジア近隣の諸国には哨戒艇の贈与などが続いている。鳴り物入りで喧伝しているアベノミックスは勇ましい掛け声だけで、実体経済にはほとんど効果は及ばず、GDPの主力である消費は落ち込んだままだ。安倍政権は世界最高速で進む高齢化に真剣に対応しているとも思えない。このままでは日本の地方の衰退はさらに進むだろう。
WTO貿易紛争処理委員を1995年以来委嘱されているところより、2005年のWTO創設10周年記念式典にWTOジュネーブ本部を訪問した。さらにイタリア北部の湖畔で開催の欧州のWTO記念式に参加の為、ジュネーブから国際列車でイタリアに移動した。途中のアルプス山麓のスイス、イタリアの農村がきれいに整備されきれいな緑の田畑が広がっていることに感銘を受けた。農村の発展なくして国の繁栄はないと痛感した。

安倍政権は日本の農村や、農産物、食品、健康に大きな影響を与えるTPPからトランプ政権が撤退した後も、成り行きとしか思えない態度で、その影響を十分検証もせず、米国の抜けたTPPの成立をめざし、主導権を取って、TPP11カ国で協定を発効させようと交渉中だ。多国籍企業や大企業に有利なTPPを実現しようと国民不在で躍起になっている。むしろこの機会にアジアを中心とするRCEP(ASEAN10カ国+日中韓印豪、NZ16カ国の東アジア包括的経済連携)や、中國が熱心なアジアインフラ開発銀行AIIB、アジアから欧州への大物流計画「一帯一路」構築に中国、インド、ASEAN諸国などと協力する方策を検討することこそ先決ではないか。
鹿児島空港から郷里肝付町へのバスの道すがら、倒れた杉の木や、竹林が続いており、少子高齢化の田舎では伐採する人手もないことを実感した。地方の衰退は日本の将来を暗示しているように思えた。