BIS論壇 『TPPと一帯一路』 2017年10月7日 中川十郎

BIS論壇 『TPPと一帯一路』 2017年10月7日   中川十郎

去る10月3日、日本プレスセンターで「台頭する自国第一主義:世界経済の後退リスクをいかに回避するか」~外国目メデメディアを迎えて考える~フォーリン・プレスセンター(赤坂清隆理事長)主催シンポジウムが開催されたので参加した。
さらに10月5日(木)日中関係学会主催の中国研究会が神田・学士会館で開催され、「一帯一路」戦略についても発表があったのでこちらにも参加した。その概略を報告したい。
前記シンポでは、TPPに関して早くから賛成の論陣を張っておられる早稲田大学・浦田秀次郎教授も講師として参加。さらに米国、英国、カナダなどのジャーナリストが参加するので、筆者としてTPPに関するかれらの意見も聴取したいと参加した。
浦田教授は、TPP11で日本が主導権を発揮し、まとめれば将来、米国もTPPに回帰するはずとのいつもながらの希望的楽観論を述べられた。これに対し、米国のウォール・ストリート・ジャーナル紙・国際経済副編集者のベッキー・バウワーズ氏や、トロント・スター紙・国際情勢コラムニストのトーマス・ウォルコム氏などは、懐疑的であった。理由はTPPからの脱退をトランプ大統領は宣言。さらに20年以上前の1994年に成立のNAFTA(北米自由貿易協定)でさえ、トランプ大統領は米国に有利にすべく再交渉を唱えている。さらに韓国とのFTAについても二国間交渉で圧力をかけて見直しを迫っている現状下、米国のTPP回帰は困難だろうとの見解であった。米国農務長官も最近、日本との二国間交渉で農産物の対日輸出を拡大したいと宣言している。かかる状況より判断し、浦田教授や日本政府の米国のTPP復帰論は現実的でないと判断すべきだと思う。11月のベトナムでのAPEC首脳会議までにTPP交渉の決着つけるとの安倍政権のもくろみは簡単には実現しないと見るのが妥当だとの感触を持った。
日中関係学会では「一帯一路」に関して、九州旅客鉄道元社長の石井幸孝氏が「国鉄改革30年―日本とアジアの鉄道の明日~「一帯一路」の戦略など~」と題して講演された。
JR各社は採算を取るため、旅客だけでなく貨物新幹線を実現し、日本の物流を新幹線で活用すべきだとの提言には聴衆のほとんどが賛意を表していた。アジア大鉄道、高速鉄道建設時代を迎え、中国、インド、アジア、中央アジア各国、ロシアの鉄道軌道二重系の克服が最も重要だと強調された。ロシアのシベリア鉄道は広い故、一帯一路計画では中国はシベリア鉄道を使用せず、標準軌道で中國からヨーロッパへの物流網建設に尽力しているとのこと。これに対してメコン4カ国は高速道路建設で物流網拡大を狙っている。一方、中國昆明からラオスを縦断する高速鉄道(総工費60億ドル)の「一帯一路」構想は地元不在のまま建設が進むと10月6日の日経紙は現地の批判的動きを掲載している。中央アジアの中国~欧州向け物流の陸の港を目指すカザフスタンと違い、インドを含め、ASEAN、アフリカでの一帯一路戦略は中國の慎重な対応が必要だと痛感した。